PLATEA

PLATEA No.3より
働きバチ“戦死”に労災を!
弁護士  高崎 暢
1.
  6月18日、「過労死110番」を開設。
  それから今日まで、26件の相談(うち12件が死亡事例)。その日は一日中電話のベルが鳴りっぱなし。その後も事務所での面接、自宅へ出向いての調査と大忙し。私が少々過労ぎみ。
  「過労死110番」の件は、宮崎からの帰途、気楽に頼まれ、気楽に承諾したのがきっかけ。初めは、もっと慎重に決断すべきだったと嘆いてみたが、今では、遺族の被害の実態、悩みの深さに、「何とかしなければ」とファイトを燃やしている。
2.
  労働時間の短縮を目玉にした改正労働基準法が施行され、週休二日制が増加するなど、「豊かな生活の実現」を目指す動きが高まっている中で、現実の労働現場では「豊かさ」とは裏腹の傾向が目立っている。深夜職場の急増、事実上の労働時間の延長、休日無しの働きづめ…そして“働バチ”を突然見舞う過労死。
  こうした過労死は、職場でのストレスの増大が要因と指摘されている。
  残された妻たちは、「働きすぎが原因」と確信をもっていながら、どうしたらいいか判らないまま放置され、それに輪をかけるように、労働基準監督署の窓口の不親切さ、過労死の労災認定の基準の立ち遅れがある。
3.
12件の内容は次の通りである。
(1) 年代別 20代1名 30代2名 40代4名 50代5名
(2) 死因別 脳血管障害(脳出血、くも膜下出血等) 5名
          心臓疾患(急性心不全、心筋梗塞等) 5名
          その他(自殺) 2名
(3) 職業別 運転手 6名
         土木作業員  2名
         教員  3名
         その他  1名
4.相談例

  (1) 運転手(40歳) タンクローリーの運転手、札幌苫小牧間3往復が通常、苫小牧から稚内までの日帰り工程。午前9時出勤で翌朝2時帰宅、午後10時出勤で翌日午後3時帰宅の勤務体系。2週に1度勤務体系交代、完全休日は2週に1度。しかし班長として変わりに休日出勤すること度々。死亡の6日前も会社から休日出勤命令。
  2ヵ月前の検査でストレスがたまっているので運転に注意と会社から指導受ける。休日で焼酎2杯晩酌、就寝中に急性心不全で死亡。既往症なし。

  (2) 運転手(42歳) 配送係。朝6時出勤(冬は5時半)夜9時帰宅(早くて8時、11時12時も度々)。休日は不定期で月1〜2回。配送が5分でも遅れると始末書を提出するシステム。暮れのピークをすぎての3カ月後、1週間休日なしで勤務し休日の前夜就寝10分後にくも膜下出血で死亡。既往症なし。日頃から疲労を訴えていた。

  (3) 営業マン(28歳) デパート、小売店まわり、午前7時半出勤で帰宅は午後8時すぎの毎日。帯広、稚内などは日帰り出張。既往症なし。ゴールデンウィーク3日間休んで、出勤した朝会社で急性心不全で倒れる。

  (4) 会社員(50歳) スキー学校指導員・学校長。スキー場新規開設と学校開設に奔走。ワンマン社長との板ばさみ。陸運局との交渉も一手に引き受け。長野県に研修の為1週間出張中、頭痛、胃痛の為帰宅。医者から精密検査の指示。しかし現場(日高)から電話で呼び出され直行。翌日帰宅し、病院へ行く準備中に急性心不全で死亡。既往症なし。

5.
  今年6月、東京高等裁判所は、市の課長が出張中に死亡した事件で、職務上の慢性疲労とストレスに起因する公務災害であると認定した。長期間の疲労の蓄積も職務上の災害に当たると認定した点で、従来の認定基準に一石を投じた。
6.
「豊かさ」とは対照的な労働現場を知ったいま、この問題を放置する訳にはいかない。自らの命と引き換えに働きづくめの“企業戦士”たち、あるいはそうした過密労働を強いられている働く仲間たちに、本当の豊かさ、人間としての生き甲斐を取り戻させることが緊急である。
  犠牲者をこれ以上出してはならない。残された妻たちの哀しみ、憤りを、二度と味あわせてはならない。そして身も心もすり減らして働いた代償として、当然に、職務上の災害を認定させなければならない。
  この秋、「過労死問題研究会(仮称)」を発足させるために、いま、医師の協力を得ながら準備中である。
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